
プログラミング教育の必修化に伴い、「プログラミング的思考」という言葉をよく聞くようになりました。
しかし、プログラミング的思考が結局どういう力なのか、はっきり理解できている方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、論理的思考との違いから、AIが当たり前になった今も必要とされる理由、家庭で平日10分から始められる方法までをまとめました。
プログラミング的思考とは?
プログラミング的思考とは、目的にたどりつくまでの手順を組み立てて、うまくいかなければ組み替えていく力です。文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」でも、意図した活動を実現するために動きの組み合わせをどう改善していけばよいのかを論理的に考えていく力、と説明されています。
参照:小学校プログラミング教育の手引
たとえば、朝7時に家を出ると決めたときのことを思い浮かべてみてください。着替えて、朝ごはんを食べて、歯をみがいて、持ち物を確認する。この4つをどの順番でやれば間に合うのか、どこかで遅れたら何を先に回すのか。無意識にやっているこの組み立て直しが、まさにプログラミング的思考です。

つまり、パソコンの前でしか使わない特別な力ではありません。目的から逆算して段取りを考える頭の使い方のほうです。
ただ、似た言葉と混同されやすいのも事実です。とくに迷いやすい「論理的思考」との違いを、先に整理しておきます。
プログラミング的思考と論理的思考の違い
プログラミング的思考は、論理的思考の一部です。どちらかを選ぶという話ではありません。筋道を立てて考える力全体が論理的思考で、そのなかでも「もっと早く確実にゴールに届く手順に組み替える」ところに重心を置いたものが、プログラミング的思考だと考えるとすっきりします。
具体的には、「なぜ宿題が終わらなかったのか」を順序立てて説明できるのが論理的思考です。そこから「明日は先に難しい問題からやってみよう」と手順を組み替えるところまで進むと、プログラミング的思考が働いています。考えを整理する力と、整理した結果でやり方を変える力。この2つは地続きです。
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プログラミング的思考を構成する5つの力
プログラミング的思考は、一般的に5つの力に分けて説明されることが多いです。名前だけ見ると難しそうですが、中身はどれも日常のなかにあります。
参照:小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
こうして並べてみると、どれも日常のなかにある動きだと気づきます。ただ、ここが分かれ目です。ほとんどの人は無意識にやっているだけで、意識して組み立て直すところまでは踏み込んでいません。段取りのうまい人とそうでない人の差は、この5つを意識して回せているかどうかで生まれます。
ただ、家庭で5つ全部を意識する必要はありません。最初に効くのは分解と、やったあとの振り返りの2つです。この2つが回りはじめると、残りの3つは後からついてきます。
では、AIに聞けば手順まで教えてくれる時代に、この力は本当に必要なのでしょうか。
プログラミング的思考がAI時代に必要とされる理由
プログラミング的思考は、AIが賢くなるほど必要になります。なぜなら、AIを使いこなせるかどうかは、やりたいことを分解して言葉にできるかどうかで決まるからです。
一度、生成AIに「夏休みの自由研究のテーマを考えて」と入れてみてください。おそらく、どこかで見たような無難な案がいくつか返ってくるはずです。ところが「小学4年生、虫が好き、かけられるのは3日、家にあるのは虫かごと図鑑」と条件を分けて伝えると、返ってくる内容ががらりと変わります。
この差を生んでいるのが、まさに分解する力です。やりたいことを要素に切り分けて、順番に言葉で渡す。AIに任せる時代になっても、何をどう任せるかを決めるのは人のほうです。ここがあいまいなままだと、返ってくる答えもあいまいなままになります。

また、国の動きも同じ方向を向いています。文部科学省は2024年12月に学校向けの生成AIガイドラインを改訂し、2026年度には149自治体、認定校を含む478校を生成AIパイロット校に指定して、成果と課題の検証を進めています。
参照:学校教育におけるAI活用に関するこれまでの取組と今後の方向性
言い換えると、これは「プログラミングを習わせるかどうか」の話ではなくなってきています。AIを道具として使う側に立てるかどうか、その土台の話になってきたということです。
学校で身につく範囲は?
小学校では2020年度からプログラミング教育が必修になっています。ただし扱われるのは教科の学習のなかで触れる範囲までで、プログラミングという教科が新しくできたわけではありません。
算数では、正多角形を画面上に描く活動のなかで「同じ角度と長さの繰り返し」という考え方に触れます。理科では、電気の利用を学ぶ単元でセンサーを使った制御を扱います。あくまで算数や理科を深く理解するための手段であって、言語を覚えることが目的ではありません。
そのため「学校だけで足りるのか」という問いには、目的しだいとしか答えられないのが正直なところです。考え方の入り口に触れるという意味では、学校の学習でまかなえます。一方で、触れる時間そのものは限られています。
家庭でできる平日10分の習慣
ここからは具体的な方法です。特別な教材も、親がプログラミングを知っていることも必要ありません。平日の10分でできる3つの習慣を紹介します。
段取りを子どもに任せる
いちばん手軽なのは、いつもの用事を丸ごと任せてしまうことです。買い物なら「この3つを買ってきて、予算は500円」と渡すだけで、店内での回り方から予算配分まで自分で組み立てることになります。所要時間は10分ほど、準備するものもありません。
ポイントは、途中で口を出さないことです。効率の悪い順番で回っていても、レジで少し足りなくなっても、そこで初めて「次はどうしよう」と考えます。この考え直す瞬間こそが練習になるので、失敗はむしろ歓迎してよい場面です。
任せる範囲は学年によって変えると無理がありません。目安は次のとおりです。
遊んだあとに振り返る
2つめは、遊びが終わったあとの1分です。ゲームでもスポーツでも構いません。「今日いちばんうまくいかなかったところはどこだった?」と1つだけ聞いてみてください。
たとえばゲームで同じ場面をクリアできなかったなら、なぜ失敗したのか、次はどこを変えるのかを言葉にしてもらいます。頭のなかでは何度もやり直しているので、子どもはたいてい答えを持っています。それを口に出すだけで、シミュレーションと一般化の練習になります。
声かけを問いかけに変える
3つめは、親の側の習慣です。いつもの指示を、そのまま問いかけの形に変えるだけで構いません。
- 「先に宿題をやりなさい」→「先に何をやると楽になりそう?」
- 「早く準備して」→「あと何が残ってる?」
- 「そこはこうやるんだよ」→「どこでうまくいかなかった?」
やることは同じでも、問いかけの形には考える余地が残ります。
指示は答えを渡してしまうので、子どもは順番を組み立てる場面に立ちません。問いかけの形にすると、その場で自分の頭を使うことになります。親が教える必要はなく、考える場面を渡すだけで十分です。答えが的外れでも訂正しなくて大丈夫です。
とはいえ、毎日これができる日ばかりではないですよね。疲れている日は指示で済ませて構いません。週に2回か3回、余裕のある日に問いかけへ変えられれば、それで積み上がっていきます。うまくいかない日を数えるより、できた日を数えるほうが続きます。
まとめ
プログラミング的思考は、目的にたどりつく手順を組み立てて、うまくいかなければ組み替えていく力です。コードを書く技術のことではありません。
AIが答えを出してくれる時代になっても、この力の価値は下がりません。やりたいことを分解して言葉で渡せる人ほど、AIをうまく使えるからです。学校では教科の学習のなかで入り口に触れますが、続ける時間と手を動かす量は家庭で足せます。
まずは、買い物や食事の支度をひとつ任せてみるところからで構いません。特別な教材も親の知識も要らないので、今日の夕方からでも始められます。
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