
2026年7月、文部科学省から小中学校の情報教育を増やす案が示されました。まだ案の段階ですが、変わる中身はかなり具体的に見えてきました。
「うちの子は何を学ぶことになるのだろう」と気になった方も多いのではないでしょうか。
今回の変更案のポイントは以下の通りです。
今回の変更案のポイント
- 中学校に新教科「情報・技術科(仮称)」ができ、授業は最大で週2コマに
- 小学校は総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」が加わり、高学年で週1コマ程度
- 授業時間の合計は増やさず、他の教科から少しずつ回して捻出する
- 全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度。2028年度から段階的に先行実施
- いずれもまだ案の段階で、正式に決まったものではない
ここからは、学年別の対象時期や小学校と中学校で学ぶこと、家庭で準備しておきたいことまで、順番に見ていきます。
- 1. 今回示された案の全体像
- ・授業時間の合計は今のまま
- ・学年別に見る対象時期
- 2. 小学校は総合の時間に「情報の領域」
- 3. 中学校は「情報・技術科」を新設
- ・技術・家庭科を分けてつくられる新しい教科
- ・今の2倍にあたる授業時間
- 4. 小学校と中学校では何を学ぶ?
- ・小学校で学ぶのはAIとネットの使い方
- ・中学校で学ぶのはプログラミングとフィジカルAI
- 5. なぜ今、情報教育を増やすのか
- ・日常にも仕事にも広がったAI
- ・求められるのは情報を見極める力
- 6. この案で気になること
- 7. 家庭では何を準備すればよい?
- ・先取りは必要ない
- ・家庭で積んでおきたい経験
- 8. 重要なのは授業時間より「学び方」の変化
今回示された案の全体像
今回の案は、2026年7月8日に文部科学省が中央教育審議会の特別部会へ示したもので、まだ正式に決まったわけではありません。
次期の学習指導要領は小学校が2030年度、中学校が2031年度から実施される見通しですが、情報・技術系の拡充はこれを待たず、2028年度から段階的に始める方針です。
学習指導要領とは?
学習指導要領とは、全国どの学校でも一定の水準が保てるように国が定めているカリキュラムの基準で、およそ10年に1度のペースで改訂されています。
まずは、全体としてどこが動くのかを押さえておきましょう。
授業時間の合計は今のまま
情報の授業が増えると聞くと、子どもが学校で過ごす時間そのものが延びるように感じるかもしれません。ですが、増えるのは情報にあてる時間だけで、1年間の授業の合計は今と変わらない見込みです。
小学校4年生以上〜中学校の標準授業時数は、年間で計1015コマとなっていて、文部科学省はこの全体の総枠を維持する方針です。そのため、国語や社会など他の教科から年間数コマずつ振り分けることになります。
学年別に見る対象時期
お子さんが新しい課程に当たるかどうかは、今の学年でだいたい決まります。さきほどの全面実施の時期から逆算すると、2026年度時点の学年ごとに次のような関係になります。
小学5年生以上のお子さんは、全面実施を待たずに卒業する計算です。ただ、まったく無関係というわけでもありません。
まだ決まっていないこと
2028年度から段階的に先行実施することは示されていますが、どの学年から何を前倒しするかまでは決まっていません。コマ数や教科名も、今後変わる可能性があります。
小学校は総合の時間に「情報の領域」
小学校には、新しい教科はできません。今ある「総合的な学習の時間」のなかに、「情報の領域(仮称)」という枠が加わる形です。ちなみに、総合的な学習の時間そのものを「総合的な探究の時間」へ改称する案も並行して議論されています。
時間割に「情報」という科目が並ぶわけではないので、お子さんの実感としては、総合の時間の中身が変わるというほうが近いかもしれません。あてられる時間は学年によって変わります。
高学年でも週1コマ程度なので、毎日パソコンに向かうわけではありません。学校でのプログラミング教育の位置づけについては、プログラミングの授業ってなに?小学校での必修化と内容でも整理しています。
中学校は「情報・技術科」を新設
中学校は小学校と違い、新しい教科そのものが生まれます。今回の案でいちばん変化が大きいのが、この部分です。
技術・家庭科を分けてつくられる新しい教科
今の中学校には「技術・家庭科」という教科があり、そのなかの技術分野でプログラミングや情報セキュリティを学んでいます。案では、この技術・家庭科を技術科と家庭科に分けたうえで、技術分野に情報の内容を厚く乗せた「情報・技術科(仮称)」を新しくつくることになっています。
つまり、これまで家庭科と一つの枠を分け合っていた状態から独立して、情報と技術だけの教科になるということです。教科として独立すれば、時間割の中で確保される時間もはっきりします。
今の2倍にあたる授業時間
新しい教科にあてられるのは、今の技術分野のおよそ2倍の時間です。
表の「現在」は、技術・家庭科にあてられている時間を技術分野と家庭分野でおおまかに分けた目安です。中1と中2の技術・家庭科は年70コマなので、その半分ほどが技術分野にあたります。
ここで見落としやすいのが、家庭科は分離後もなくならないという点です。家庭科の時間が残ったうえで情報・技術科が倍になるので、その差にあたる分は他の教科から回ってくる計算になります。さきほど触れた「合計は変わらない」の中身は、こういうことですね。
小学校と中学校では何を学ぶ?
学ぶ内容は小学校と中学校でつながっていますが、踏み込む深さが違います。それぞれ見ていきましょう。
小学校で学ぶのはAIとネットの使い方
小学校で扱うのは、AIやインターネットを安全に使うための土台です。
たとえば、生成AIが事実と違う答えを自信たっぷりに返してくること。これはハルシネーションと呼ばれる現象で、出てきた答えをそのまま信じてはいけない理由でもあります。ほかにも、集めたデータを表やグラフにまとめる方法や、人の文章やイラストを勝手に使うと著作権を侵害してしまうこと、他人のIDで勝手にログインする不正アクセスがなぜいけないのかといった内容が挙がっています。
どれも、子どもがタブレットやスマホを使ううちに一度はぶつかる場面ばかりです。家庭で伝えきれない部分を学校が引き受けてくれる、と考えると心強いのではないでしょうか。
中学校で学ぶのはプログラミングとフィジカルAI

中学校では、小学校の内容に加えて仕組みそのものに踏み込みます。とくに目を引くのが「フィジカルAI」です。
フィジカルAIとは、AIで機械やロボットを実際に動かす技術のことです。画面の中で完結せず、センサーで周りの状況を読み取って物を動かすところまでを扱います。あわせて、コンピューターが手順を組み立てる考え方であるアルゴリズムや、デジタル技術を使った材料加工などのものづくり体験も入る予定です。
プログラミングを学ぶ点は今と同じですが、AIをどう使うかまで含めて学ぶところが、これまでとの一番の違いです。
なぜ今、情報教育を増やすのか
ここからは、この案をデジタネ編集部としてどう見ているかを書いていきます。まずは、なぜこのタイミングなのかという点からです。
日常にも仕事にも広がったAI
この数年で、AIは特別な道具ではなくなりました。
調べものをするときに検索ではなくAIに聞く、資料の下書きをAIに作らせる、写真の加工をAIに任せる。大人の職場だけの話ではなく、子どもが使うアプリにもAIの機能が当たり前のように入っています。学校でも一人一台の端末が定着し、生成AIを授業で扱う場面が出てきました。
情報教育の中身が以前のままでは追いつかない。それが今回の見直しの背景にあると考えます。
求められるのは情報を見極める力
もう一つは、操作を覚えるだけでは足りなくなったことです。
タイピングができる、資料が作れるといったスキルは今も大事です。ただ、AIが答えらしいものを一瞬で出してくる環境では、出てきたものが正しいかどうかを判断できるかどうかのほうが、差になります。
これからの情報教育は、道具の使い方を教えるものから、情報の見極め方を教えるものへ変わっていくのだと思います。小学校から高校まで通して体系的に学ぶ形を整えようとしているのも、そのためでしょう。AIとの向き合い方については、AIを「味方」につけるのが正解!正頭先生と考えるAIネイティブ時代の子育ても参考になります。
この案で気になること
情報の授業が増える一方で、他の教科の時間が減ることに不安を感じる方もいると思います。
前回の学習指導要領改訂では、小学校の英語が3年生からに広がった際、小3〜小6の年間授業時数そのものが35コマ増えました。新しい学びを追加するために、授業時間全体を増やしたわけです。
一方、今回は総授業時数を増やさず、その中に情報教育の時間を設ける方針です。子どもの在校時間や先生の負担を増やさないという点ではメリットがありますが、気になるのは、時間が減る教科の学習内容もあわせて整理されるのかという点です。
学ぶ内容が変わらないまま授業時間だけ減れば、授業が駆け足になる可能性もあります。このあたりは現時点ではまだ明確になっておらず、今後の議論で注目したいポイントです。
制度の詳細が固まるまでには時間がかかります。だからこそ、学校で何が変わろうとしているのかを知り、家庭でできる準備を考えておくことも大切だと考えます。
家庭では何を準備すればよい?
実際にどこまで学べるかは、学校によって差が出る可能性があります。公立中学校で技術科を担当した教員9,649人のうち、およそ4分の1にあたる2,406人は、臨時免許状や免許外教科担任という形で授業を受け持っているという調査もあります。(参照:秋田魁新報 社説:小中学校の情報教育 指導態勢の整備進めよ)
設備や教材の差も含めると、同じ案から始まっても受けられる授業には幅が出そうです。だからこそ、家庭で少し補っておく意味があります。
先取りは必要ない
特定のプログラミング言語を今から先取りする必要はありません。
PythonやJavaScriptといった言語名を聞くと身構えてしまいますが、授業で求められるのは特定の言語を書けることではありません。小学校で始まるのはAIやネットとの付き合い方ですし、中学校でも仕組みの理解が中心です。今すぐ塾を探さなければ、と焦る必要はありません。
家庭で積んでおきたい経験
そのかわり、家庭で積めるとあとで効いてくる経験が3つあります。
1つめは、タイピングと基本操作に慣れておくことです。授業でAIやプログラミングを扱うとき、キーボードを打つのが遅いだけで手が止まってしまいます。ローマ字を習う小学3年生ごろから遊び感覚で触れておくと、差がつきにくくなりますね。始めどきは小学生のタイピング練習はいつから始める?を目安にしてみてください。
2つめは、情報を比べて確かめる習慣です。AIや動画で知ったことを、そのまま信じずに別のところで確かめてみる。「それどこで見たの?」「他の人はなんて言ってた?」と親子で聞き合うだけでも十分な練習になります。小学生にAIを使わせて大丈夫?という不安があるなら、まずは親子で一緒に使ってみるところからでかまいません。
3つめは、うまくいかないときに自分で考え、直してみる経験です。工作でも料理でもかまいません。思ったとおりにならなかったときに、すぐ大人が手を出さず、「どこが原因だと思う?」と一度返してみてください。自分で見当をつけて直せた経験があると、授業で初めての道具を渡されたときにも手が止まりにくくなります。
重要なのは授業時間より「学び方」の変化
コマ数が2倍になるという数字にどうしても目が行きますが、今回の案でいちばん大きいのは時間の長さではないと思います。覚えた操作を再現する学びから、自分で課題を見つけて解く学びへ変わること。ここが本質的な変化です。
AIに聞けば、答えらしいものはすぐ出てきます。だからこそ、その答えでいいのかを確かめ、作って試して直す経験を積んだ子が強くなっていきます。学校の授業だけでその時間を十分に取れるかというと、正直まだ見通せない部分もあります。
今回の案を整理すると、次の3点です。
- 中学校に「情報・技術科(仮称)」ができ、授業時間は今の技術分野のおよそ2倍になる見込み
- 小学校は総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」が加わり、高学年で週1コマ程度
- 全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度で、2028年度から段階的に先行実施
まだ案の段階なので、コマ数や名称は今後変わる可能性があります。ただ、情報を扱う力が学校教育の柱の一つになる流れは、もう動き出しています。
学校で始まる前に、お子さんがこうした学びにどう反応するか見ておきたいと思われたら、家庭で試してみるのも一つの方法です。デジタネなら、マインクラフトやRobloxのゲーム制作を通じて、プログラミングの考え方をオンラインで学べます。
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